軽やかに、また一歩―関ジャニ∞「ドームLIVE 18祭」(2023.1.7/東京ドーム)


 ドーム18祭、東京ドーム1日目の公演に行ってきました。毎度のことながらネタバレを含みますのでご注意ください!

 


 後楽園駅から外へ出ると、すっかり日は落ちていた。空は、青と白に少しの橙を添えた、美しいグラデーションを浮かべている。大きなジェットコースターのレールを左手に見ながらぼんやり歩いていると、しばらくして、指定されていたゲートと逆方向に進んでいたことに気付いた。引き返して指定の入口へ向かう。他のゲートから少し離れた位置にあるからか、人の列は少なく、スムーズに入場することができた。席は三塁側。なんだか三塁側には縁があるのかな、と、前回のドームライブのことがふと蘇ってくる。あれから3年半経つのだなあ、と思うと、本当に月日の流れは早い。

 開演までの時間に、アプリを設定する。今年のペンライトは、アプリを起動したスマホBluetoothで同期することで、特別な演出に参加できるという。他のグループのコンサートで使われていたということだけれど、関ジャニ∞のコンサートでは初めての試みだ。周りを見ると、ほとんどのお客さんがこのペンライトを持っている。会場では時折アプリの説明が流れていて、「試しにブルーにしてみるで~」という画面の後で、会場が一色に染まると、どこからともなく「わあっ」という嬉しそうな声が聞こえてきたのが印象的だった。


 エイトコールを始める間もなく、モニターにオープニング映像が流れ始めた。銀河を走る列車にメンバーが集まってくる。ひとりだけ乗り遅れた丸山さんが窓から強引に入るアクロバティック乗車をかました後、列車は瞬く星々の間を走り抜けて、終点のドームへと向かった。

 1曲目は「歓喜の舞台」。3年ぶりに戻ってきた彼らにとって、このドームという舞台には特別な思いがあることだろう。そこからは「へそ曲がり」、バックステージで歌う「EJ☆コースター」と続く。「がむしゃら行進曲」の間奏でひとりひとりの挨拶があり、そこからはライブでもおなじみの「無責任ヒーロー」と「前向きスクリーム!」。サブモニターには歌詞だけでなく、それぞれの曲の収録CDと発売年も表示されている。細かな心遣いが嬉しい。

 次は、恒例のジャニーズメドレー。なにわ男子の「ダイヤモンドスマイル」に始まり、SixTONES「Imitation Rain」、Snow Manブラザービート」と、若手グループの代表曲を続けて披露する。丸山さんと安田さんが歌うKinKi Kidsの「シンデレラ・クリスマス」に浸ったあとの「花唄」(TOKIO)の演出は、誰かに怒られないか心配になりながらも、思わず笑ってしまった。続く「まいったネ 今夜」(少年隊)は大人の魅力が凝縮されていて、その振り幅に驚かされる。夏は大将に見守られながらお寿司を食べていた丸山さんは、冬は貴族に見守られながらお肉を食べていた。

 嵐の「台風ジェネレーション」「Monster」、そして一瞬の「ええじゃないか」(ジャニーズWEST)でメドレーを締めたあとは、VTRを挟んで「七色パラメータ」。驚きにも似た歓声が会場に広がる。「急☆上☆Show!!」「イッツ マイ ソウル」の2曲でアリーナをめぐった後、メインステージに戻って「キミトミタイセカイ」。大サビ、大倉さんのハイトーンを生で聴いて、まだまだ進化していく関ジャニ∞の凄さを実感した。

 口上代わりの「∞レンジャー」のあと、会場に5人のヒーローが現れる。誰がセンターかで揉めている5人の前に、「アンビ団」なる3人組が現れた。すっかり懐柔されたB.A.D.団に変わる、新たな敵である。必殺技を駆使して撃退すると、街には再び平和が訪れた。モニターが切り替わり、キャンジャニ∞の楽屋を映し始める。「私たちの発表、受け入れてくれるかしら…」と不安げに話すメンバー。そして、待望の新曲が発表される。ひとりひとりの自己紹介の後で、「ないわぁ~フォーリンラブ」。サビのキャッチーなメロディと、弾むような振付がとても可愛い。約7年越しに新曲が発表されるのは嬉しい予想外だったけれど、これからのキャンジャニ∞の活躍も期待したい。

 曲が終わり、倉子さんの「次はAmBitiousよ」との一言から、Jr.コーナーへ。関西ジャニーズJr.のグループであるAmBitiousから5人が登場し、2曲を披露する。アンビ団のセンターにいた浦くんは、昨年別の舞台で演技を観る機会があったので、久しぶりに親戚の子にあったような気持ちになった。……実際にはそのような親戚の子はいないので、あくまで想像である。

 フレッシュなステージの後、再び登場した関ジャニ∞が披露するのは「Snow White」。名曲揃いの「GIFT」の中でも特に好きな一曲だが、まさかここで聴けると思っていなかったので驚いた。心に染み入るバラードのあとで、客席のペンライトが消され、「Black of night」。続く「Dye D?」では、ドームが一面の赤に染まる。この3曲とも安田さんが作詞作曲に関わっているというのだから、このグループは本当に末恐ろしい。

 モニターは、銀河を走る列車の中を映した映像に切り替わる。乗客の彼らが音を奏で始めると、メインモニターが開き、バンドセットを載せたムービングステージが現れた。「宇宙へ行ったライオン」。ステージはそのまま会場後方へ向かい、「応答セヨ」。その歌い出しと、続く「ここにしかない景色」を聴きながら思い出すのは、2018年夏の札幌ドームだった。その情景がよぎることに少しの寂しさを感じたけれど、今ここでこの曲たちが奏でられているという事実はとても嬉しい。会場を埋めつくす歓声の中で、「ズッコケ男道」と「勝手に仕上がれ」。久しぶりに発する掛け声は、どこかぎこちなくなってしまった。遠慮なく声出しが出来る日をさらに待ち遠しく思う。バンドコーナーの最後は「愛でした。」。選曲にどんな思いが込められているのかつい考えてしまうけれど、そんな考えすぎの私に、シンプルな答えを提示してくれたようにも思えた。

 本編最後には、改めてひとりひとりの挨拶があった。ドームに響く、安田さんの「ありがとう」の声。丸山さんの「ありがとー!」に被さるように広がっていく歓声の波。「マスクを外した皆さんの顔が見られることを期待しています」と語るのは横山さん。「このキャリアでもまだ夢を見られるんだ」、嬉しそうな村上さんの顔。そして、大倉さんが見据える『未来』。その言葉たちを反芻しながら、「ひとつのうた」。ペンライトの制御は無く、お客さんはそれぞれ好きな色を灯す。客席を埋めるカラフルな光の粒が、美しい情景を作り出していた。アンコールで3曲を披露した後、3時間弱にわたるコンサートは幕を閉じた。


 駅へと向かう道を歩きながら、ここ最近ずっと抱えていた気持ちがとても軽くなっているのを感じていた。考えてみれば、体にも余計な力が入っていたのかもしれない。彼らを見るときに抱いてきた緊張感や、ある種の祈りにも似た感情が、随分と薄れているのが分かった。……きっと、それでいい。目の前にある「今」を、純粋に楽しめばいい。頭で分かっていたつもりだが、この日、ようやく身を持って実感した。そして、ずっと咀嚼しきれなかった気持ちを、ようやく飲み込むことができた。随分と時間はかかったみたいだけれど。

 実をいうと昨夏、スタジアムの帰り道で聞こえたある言葉に、私は「そんなこと言うなんて」と、ぷりぷり腹を立てていた。今思えば、6や7という数字を思い出す自分を情けなく思う気持ちが転じた、ちょっとした八つ当たりだったのかもしれない。今の私は、怒りではなく納得の気持ちを持って、その言葉を受け取ることが出来るだろう。だって、それは本当のことだから。あの出来事を大きな穴と捉えるのも、曲を聴いてその姿を思い出すのも、至極当たり前のことなのだ。きっと、関ジャニ∞として舞台に立ち続ける彼らも、その気持ちの存在を知っているだろう。そのうえで、彼らは進んでいる。決別でも執着でもない、また違った道を。その根底にあるものは、意地ではなくて、愛なのだと信じたい。そして、その道を行く彼らの背中を、また追いかけたいと思った。足取りは軽い。気付かないうちに、余計な荷物を少しずつ置いてきたようだった。

 帰りの電車内でTwitterの画面を開く。ツイート作成のボタンを押して、難しいことは考えずに新鮮な気持ちを書いた。あのとき―ファンになった頃に戻ったような気持ちで書いた結びの一文は、飾らずに、ありのままの感情を。

 「関ジャニ∞っていいな~!」