関ジャニ∞「ジャム」(2017)


6月28日に発売された、関ジャニ∞のアルバム「ジャム」。
豪華アーティストからの提供曲も話題となっていた今作は、シングル曲の他にメンバー自身が制作を手掛けた曲も収録され、バラエティに富んだ楽曲が揃っている。
その多様な音楽性と関ジャニ∞が持つ色彩豊かな個性が融合して完成した名盤。
……と、それらしく真面目に書き出してみましたが、この調子で続けるのは語彙力が付いていかないのでやめます(笑)
発売から1ヶ月弱経ってしまいましたが、今更ながら「ジャム」を聴いた個人的感想を。
 

このアルバムは「アイドル」だからこそ出来た傑作だと思います。
勿論楽曲自体が素晴らしいというのもありますが、
ここまで幅広いジャンルの曲を「関ジャニ∞の曲」という一つのパッケージに入れることが出来るのも、そのそれぞれに「らしさ」を感じさせることが出来るのも、
関ジャニ∞というアイドルグループだからこそなのではないでしょうか。
楽曲の持つ力、関ジャニ∞の魅力、その両方が丁度いいバランスで混ざり合った、
とても素晴らしいアルバムです。

この作品を聴いてふと気が付いたのですが、私は知らず知らずのうちに頭でっかちになり過ぎていたのかもしれません。
無意識のうちに生まれていたジャンルへのこだわりとか、「もっと音楽的に色々な事を知らないと本来の楽しみ方ができないのでは…」なんていう固定観念のようなものにとらわれ過ぎていたのかな、と。
「そんなの気にせず楽しもうぜ~!」と言われているような気がして、
確かにそうだよなーなんて一人で勝手に納得したりして。
感じ方なんて人それぞれなんですよね。ごくごく当たり前のことなのだけれど。

このアルバムも、人によって違った味のする「ジャム」なのだろうと思います。
しかも、そのそれぞれが、とてつもなく美味しいんだろうなということが想像できる。
だからこそ、色々な人に聴いてほしいアルバムです。

 

 

通常盤

1. 罪と夏

2016年発売のシングル。
アルバムの幕開けにふさわしい、夏にぴったりのアッパーチューン。
照りつける日差しと白い砂浜を想起させるエレキギター、ブラスとストリングスが効いたサウンドが気分を高揚させます。
その音に乗ってやってくる、威力抜群のキラーフレーズたち。
このアルバムへの期待をぐっと高める1曲。

この曲の歌詞の凄い所は、ただのイケイケパリピ集団を描くのではなくて、
その中に若干の切なさのようなものを感じさせるところだと思います。
「真夏の俺らは罪・罪・罪なのさ」と自称する一方、
「君が今選ぶなら『そりゃ僕だぜ?』・・とか無理だしな」と妙に及び腰なところもあって、その対比が面白い。

今、君の八月の全てくれないか?

 ビーチに参上した彼らは間違いなく夏の主役のはずなのだけれど、
どこか三枚目感と女々しさが滲むところに関ジャニらしさを感じます。

 

2. 今

上昇するようなフレーズを奏でるストリングスと華やかなブラスが印象的なイントロから始まる、今作のリードトラック。
キラキラと輝く爽やかなアレンジと、どこか切なさを感じさせる歌詞が秀逸。
聴けば聴くほど味わい深い曲です。
イントロは最初「アニメOPっぽい!」と思ったのですが、何処となく火曜の夜にNHKで流れていそうな懐かしさも感じました。何か本当に布施明さんとか出てきそうな感じしません?

いつまでも 此処に居たいけれども
旅立つ夢を 見てしまったことを

初めて聴いた時に心を掴まれたのが、この歌いだしのフレーズです。
「見てしまったことを」という、背景やその先を想像させるような表現がとても素敵。
2番のサビも好きです。
「水の底から」なんて、アイドルが手を伸ばして掌をつなぐときには普通使わないと思うのですが、それを敢えて持ってくる、かつ、それが妙にしっくりきているのが凄い。
明るいサウンドの中にある陰のような部分、その湿っぽさが、関ジャニ∞の色と上手く混ざっているように感じます。
このアルバムは「関ジャニ∞が歌う」ことで魅力が増している曲が多い印象で、
その最たる例がこの曲だと思うのです。
個人的には2番Bメロ「ほんとさ」が特に好き。
村上さんの声が持つ真っ直ぐさ、力強さが効いている。

いつか目の前 たどり着けたら
苦い思い出を笑える頃かな
未来を越える 今 今 今
ほら 今 今 今

2017年の関ジャニ∞に「今」と歌わせたニセ明さん…やっぱり、只者じゃないのでは…。

 

3. DO NA I

80年代の洋楽をイメージした、大人な雰囲気のダンスナンバー。
蔦谷好位置さん・いしわたり淳治さんという強力タッグによって完成したこの曲は、
新たな角度からグループの魅力を引き出しています。

とにかくなにより歌割の良さが凄い。
「俺の好みのYOUとYOU」と歌う横山裕から始まるところがもう最高。
「主役は俺だ」と言わんばかりに、代わる代わるソロを取っていく構成も素敵です。
渋谷さんに「マチガイの恋でも素敵やん……?」のパートを振ったのが蔦谷さん発案だったのは驚きました。キャラクターをしっかり把握していらっしゃるのが凄い…。

中盤、村上さんによるラップパートは、この曲最大の見せ場といっても過言ではないはず
深夜番組でのイメージが強い村上さんが歌う「振られりゃヨゴレも演じる」というフレーズが特別な重さをもって響きます。
村上さんといえば、最後の「ほら いい顔してる」も素敵。
というか、ここまで書いて気が付いたのですが、この曲に関しては好きなパートが挙げたらキリがないほど沢山あるんですよね……。
渋谷さんの「マチガイの恋でも素敵やん……?」は言わずもがな、
横山さんの「言いすぎとちゃう」は茶目っ気たっぷりで良いし、
大倉さんの「いいリズムやん」の軽やかな感じも素晴らしくて。
最後の安田さんの高音パートはやはり流石、
錦戸さんの「どきな 主役が総取り」に関しては完璧としか言いようがない。
そんな中でもやはり外せないのが丸山さんのフェイク。
丸山さんは曲に合わせて別人かのように声色を使い分けられるのが凄いなと思います。

君を楽しませるのが 俺たちの楽しみ

このフレーズをこれだけの説得力を持って歌えるのは、
やっぱり、関ジャニ∞が間違いなくアイドルだからなのでしょう。
それにしても、「どない」という関西弁が良く似合う。

 

4. なぐりガキBEAT

キーボードとトランペットによるジャズ調のイントロから始まる、2017年発売の38thシングル。
ホーンが気持ち良く響くスカサウンドと力強い歌詞が背中を押してくれるこの曲は、
横山さんの初主演映画「破門 ふたりのヤクビョーガミ」の主題歌でもあります。
聴けば聴くほど良さが増していくスルメ曲。

言い訳と弱音をやめたら あとはドアを開けるだけ

振りも好きです。ドアを「開ける」というより「蹴破る」感じ。

個人的に、初めて買った関ジャニ∞のシングルということもあって、特別な曲のひとつでもあります。
漠然とした不安と見通しの立たない将来への絶望感でいっぱいだった時に聴いたこの曲は、光の中から差し伸べられた救いの手のようでした。
あの不思議な感覚は、きっと一生忘れない。

うつむいてた空に ほら虹がかかるよ

 

5. 夢への帰り道

アコギとブルースハープ、ストリングスが優しく響き、体にじんわりと染みるスローバラード。
ソロパートが多く、それぞれの歌声をじっくり聴くことが出来ます。
暖かくて優しい声を聴くと、夕焼けのオレンジに染まる帰り道が思い浮かぶ。

この曲は、ずっとアコースティック調で進んでいくのですが、
サビやアウトロだけエレキの音が入っていて、そこが個人的に好きなポイントのひとつでもあります。
大サビ前のギターソロも好きです。渋谷さんのブルースハープからの流れが素敵。

ああ君は孤独をピアノにかえて
ああ僕は不安をギターにしよう
お帰り 僕から言うよ
君だけに

 

6. えげつない

柔らかな雰囲気とは打って変わって、今度はEDMのアップテンポなナンバー。
いや前の曲との振り幅!と思わず吹き出してしまったのですが、この曲も好きです。

「えげつない」というタイトルは勿論、「偏西風」、「一筆で書いた二つの円」など、
表現や言葉の選び方がとても練られている印象を受けます。
「しっぺ デコピン 馬場チョップ」という言葉がここまで似合うover30、多分関ジャニ∞くらいだと思う。
韻の踏み方も好きです。「酸いもsweetも」なんて素晴らしい…。

注目はラップバトル。
初めての試みですが、組み合わせもオチも、とても面白い。
(欲を言えば村上さんのバトルも聴きたかったけれど。)
中でも一番好きなのは、大倉さんが半笑いで「手しぼりっていうし」っていうところ。
絶妙にイラッとくる感じが素晴らしい。
錦戸さんが発する、濁点だらけの「丸山ァ!」も好きです。

俺たち自身が偏西風だ 気流を掴んで乗ってこい

「うちわ」「ラップ」という飛び道具的な要素もありつつ、
「自分達が中心となってシーンに旋風を巻き起こすぞ」というメッセージが込められた曲になっているのが本当に素晴らしい。
いやあ、岡崎体育さん、やっぱり凄い……。(「鴨川等間隔」めちゃくちゃいい曲ですよねアルバム買います)

 

7. パノラマ

2016年発売。アニメ「モンスターハンター ストーリーズ RIDE ON」の主題歌。
この明るさ…正直に言うならこの幼さが、このアルバムの色と若干合っていないように思えて心配でもあったのですが、結局のところそれは杞憂でした。

個人的には2番の歌割が好きです。
「いじめっ子にはグーパンチ」のハマり具合たるや。
後は何と言っても「Ride on!」。
このパートを村上さんに割り振った人、控えめに言って天才だと思う。

 

8. Never Say Never

映画「スパイダーマン:ホームカミング」の吹き替え版主題歌に起用されたこの曲。
安田さんが作詞作曲した曲がタイアップに(しかもコンペで)選ばれたという事実に、快哉を叫んだ人も多いはず。
どこまでも突き進んでいくような勢いのある、アップテンポなロックナンバー。

容赦なく詰め込まれた音数、韻をこれでもかと踏みまくる歌詞に、安田さんの才能を恐ろしい程感じます。
「JAM LADY」(後述)の歌詞を見た時にも思ったのですが、安田さんは言葉をどう捉えているのかが本当に気になって仕方がなくて。
「意味のかたまり」というよりは「音の響き」で捉えているのかな。

歌いだしから容赦なく降り注ぐ言葉の雨に圧倒されるのですが、
それが一度緩やかになる時があって、その緩急が良いです。
このかなり重要なパートを、1番2番ともに錦戸さん・渋谷さんが担っているのは流石。
キャッチーなサビも素敵。

 

9.侍唄(さむらいソング)

2015年発売。ドラマ「サムライせんせい」の主題歌であるこの曲は、主演の錦戸さんと親交のある「レキシ」池田貴史さんからの提供。
侍のように真っ直ぐで一途な思いが歌われたラブソング。
「どの時代も越えて行ける」けれど、「キミ」と「この時代をのりこえて行く」、
そんな「今」を大切にしたいという思いを感じる歌詞が素敵です。
2番、それぞれのソロパートも良いし、その後に入るギターソロが泣ける。

この曲は「METROCK2017」に出演した際にも演奏されました。
夕暮れ時の野外でこの曲を聴いたお客さん、正直めちゃくちゃ羨ましい。

おかえりって君が笑うから この時代をのりこえて行く
あたりまえの日々を感じたい
時を越えて 今
キミのもとへ 今

約束の場所へ

 

10. S.E.V.E.N 転び E.I.G.H.T 起き

イントロから炸裂する「ユニコーン節」。
(どのくらいUNICORNかというと、恥ずかしながら全然詳しくない私でもUNICORNの曲だと一発で分かるくらいにはUNICORN。)
大人の余裕すら感じさせる、程よい「ゆるさ」が素敵だと思います。
疾走感溢れる爽やかな1曲。

Bメロの「まーこのー」「あーそのー」と続くソロパート、横山さん村上さんの声が本当にぴったり。
サビにある「エイトのビート」というフレーズは十中八九「8ビート」とかかっているのだと思うのですが、
関ジャニ∞の音楽」とも、もっと広く言えば「関ジャニ∞のスタイル」とも解釈できるのかな、と考えたりしました。実際のところはわからないんですけどね(笑)

 

11.NOROSHI

2016年発売のシングル。
ベースのスラップから始まる、どっしりとした重厚感のロックナンバー。
アルバムで聴いて改めて思ったのですが、この曲本当に格好いいです。
自分の思う道を行け、道は自分で切り開け、と歌う姿は力強くて頼もしい。

両手に受ける止まない風は、向かい風なのか、追い風なのか。
個人的には向かい風なんじゃないかなと勝手に思っています。
その後に続く「正夢の背中を追いかけろ」というフレーズも素敵だと思う。

行くべき道は そう、君の踏み出した先にある
君、行けばこそ道は開く!

 

12.青春のすべて

過去を振り返りながらも、「今」「未来」を歌うバラード。

関ジャニ∞を見ていると、時々、男子高校生のやりとりを見ているような、
どこか「青春」の延長のような雰囲気を感じることがあります。
その独特の空気感は、グループの大きな魅力の一つでもあると思うし、
だからこそ、その「青春」を過去形で表現するこの曲の歌詞が新鮮に映るのでしょう。

さよならをいくつか越えて それなりに大人にもなって
笑顔はすぐつくれるのにさ なぜなのかな うまく泣けない

渋谷さん村上さん2人の歌いだしから続く、横山さん丸山さんのパート。
柔らかな声が切ない。「アイドル」に、しかもこの2人にこのフレーズを歌わせるのは反則に近い気がする。

僕らがみたのは 青春のすべて 忘れはしないよ 季節が変わっても

7人がみた青春は、いったいどのようなものだったのだろう。

 

13.生きろ(通常盤のみ)

渋谷さんが作詞・作曲・編曲の全てを担当、メンバー全員による演奏が収録された曲。
シンプルなバンドサウンドに乗って、「あなたを生きて」というメッセージがストレートに響きます。
音の配置にもこだわりが。安田さんのギターの音がやっぱり好きだなあ、としみじみ思う。

この曲を聴くと、渋谷さんはこちらが想像していた以上に「音楽」という物の力を信じている人なのかなと思います。
きっと「アイドル」と「音楽」という物の板挟みに苦しんだ人なのではないかと思うのだけれど、それ以上に音楽に救われた経験があるのではないかな、と。
それに加えて、「アイドルである自分が歌う意味」を何処かで掴んだのではないかなとも思う。
「好きなアーティストから貰っていたら救われていたかな」と感じた言葉を、
自分が伝えたいこととして形にする、
好きなアイドルがそういった視点を持っているということ、そしてその曲を聴くことが出来るということは、この上なく贅沢なことなのだと思います。
そういった感覚がある人はきっと、自分の言葉が誰かにとって何よりの救いになることを知っているはずだから。

 

14. JAM LADY(通常盤のみ)

安田さんの才能が爆発。譜割りがエグいし韻の踏み方が尋常じゃない。
言ってしまえば全編的に下ネタなのだけれど、あまり厭らしさを感じない、からっとしたエロス。
何より凄いのは、この曲を「メンバーが作った」という事実だと思う。
というか、「メンバーだからこそ」出来る曲、それがグループの強みになっているのが凄い。
メンバーに相当近い人でないと出てこないフレーズもあるし、
ここまでそれぞれにピッタリなパートを振り分けられるのも、それぞれの声、ニュアンスの付け方、キャラクターを良く分かっているからこそなのかなと感じました。
「さだまる刀」(シャキーン)は狡すぎる。

 

15. Traffic(通常盤のみ)

「作詞・作曲 錦戸亮」。
個人的に錦戸さんの書く歌詞がとても好きで、前作「Tokyoholic」が好きなテイストの曲だったこともあり、この曲には今作で一番の期待を抱いていました。
結論から言うと、その期待はいとも簡単に越えられてしまったわけですが。
シンプルにめちゃくちゃ最高です、この曲。
好きなテイストの曲を好きなアイドルが「作って」歌ってくれるということ、それが現実であることに、この上ない喜びをかみしめている。

イントロのアコギのリフからしてめちゃくちゃ格好良くて、そこから安田さんが噛みつくように歌いだすのが堪らない。
疾走感のあるバンドサウンドは、ストリングスとブラスが入ることでよりスリリングになっています。ベースラインがとても格好いい。
他人を羨む気持ち、自分の能力を発揮できないことに対する焦燥感、自分を取り巻く現状への漠然とした不安感……。
そういった感情を高速道路の渋滞とオーバーラップさせた歌詞が本当に素晴らしい。
この人間臭い歌詞を、ドラマの主演を何度も経験しているようなトップアイドルが書いているという事実には、何とも言えないエモさがあります。

歌詞もそうだし、曲の展開が本当に良いんですよね。
特にCメロから最後のサビまでの流れが好きで。
繰り返しだけでなくもう一展開ある曲が好き、という個人的趣味もあるんですが、
このCメロで一旦落ち着いて、もう一度出てくるBメロで煽って、そして最後のサビへ繋がる、この緩急が凄く良いし、歌詞をより引き立たせているように感じられます。
横山さんのソロも凄く好きです。裏のキーボードがこれまた良い。
その展開を受けた最後のサビ、1回目のサビで「moving forward」と歌われている箇所が「going on my way」に変わっているんですよね。
どこまでお洒落なの…と思わずため息が出てしまう。

そういえば、「イントロのアコギ格好いいな!」と思ってクレジットを見たらぶったまげました。
知っている人が多数だとは思いますが、もし未見の方は是非自分の目でご確認を。

 

初回限定盤(ユニット曲)

今回のアルバムでは、「通常盤」ではなく「初回限定盤」のみにユニット曲が収録されるという形に変更されました。
確かに「これ多分ライブありきなんだなあ…」という例もちらほらあるし、住み分けとしては大正解なのだと思います。
でも今回に関しては曲自体がとても良くて、これが通常盤に残らないのが残念だなと感じてしまいました。特に「Answer」なんて年上3人の共作なのに……。
私自身ド新規なもので、「何でこれ初回盤にしか入ってないの!」とやきもきすることが多く、それ故に余計そう感じるのかもしれません。
(直近だと「The Light」(「罪と夏」収録)がそうでした。「そんなん言っても去年のシングルだし」とタカをくくっていたら何処に行っても見事に初回Aだけなくて、その度に私の脳内で「(売り場の棚に)入ってねえんだよこの野郎お前」とキレ散らかす赤星。)
曲だけ買えるなら話は別ですが、ジャニーズの場合そうはいかないので…。
かといって今回の通常盤3曲を眠らせておくのはもったいないし…。
何とも贅沢な悩みではありますが。

まあそういう話をしても一向に片付く気配がないのでやめにするとして。
今回のユニット曲、本当に素晴らしいです。
どちらも歌っているのは「過去」や「今」というテーマなのに、ものの見事に対照的というか。
答えの出ない問いをずっと考え続ける年下、前へ進むためならノスタルジアのような感情さえ切り捨ててしまう年上。
どちらが強いとか弱いとかではなくて、それぞれ違った強さなのだと思う。

4人だけでバンドを組める、かつ作曲が出来るメンバーが2人もいる年下組が自作という手段を取らなかったこと、それに対して年上組が「自分たちの言葉」を紡ぐことにこだわったこと、その両方が意外でした。
実際に曲を聴くと、そのどちらの選択も正解だったように感じます。
「Answer」は3人にしか歌えない曲だし、「ノスタルジア」もまた、4人にしか歌えない曲。

 

ノスタルジア(初回A:丸山/安田/錦戸/大倉)

少しだけひんやりした夏の夜の空気、頭上に広がる満天の星空を思い浮かべました。
ノスタルジア」って、「過去を懐かしむ心」と「故郷を思う心」、その両方の意味があるんですね。
過ぎ去った日々を懐かしむ気持ち、故郷を思う気持ち、そこに滲む断ち切れない未練のような感情が切ない。
4人の声の溶けあい方も絶妙です。

 

Answer(初回B:横山/渋谷/村上)

歌詞が凄い。
読めば読むほど色んな意味が載っていくし、どんどん重くなっていく。
これを全部書くにはどんな余白でも足らない気がします。

この曲を聴いて改めて思ったのですが、横山さんも村上さんも年々歌の安定感が増してますよね。
ソロパートがめちゃくちゃ良いです。

 

特典

最後に特典の話を。
今回のDVD、メニュー画面にも工夫があって素敵です。

初回A:「フトコロノカタナ」/「青春のすべて」MV

「フトコロノカタナ」、予想以上に見応えがあるドキュメントでした。
ぐっと踏み込んだ質問だったり、外からは向けられないであろう角度からの質問があるのが良かったです。
アルバムタイトルやユニット分け会議の様子も入っていたのが嬉しい。

「青春のすべて」。「秋」の赤・橙・黄、「冬」の白、その美しさに思わず息を呑んでしまった。桜を見上げる表情も良いです。

初回B:「撮り合いメイキング」/「今」MV

「撮り合いメイキング」、安定のわちゃわちゃ。
ハンディ手持ちで撮っているので結構画面が揺れます。
私はゲーム「カービィのエアライド」のプレイ画面で酔うくらい酔いやすい人間なので、少し画面酔いをしてしまいました。酔いやすい方は画面からの距離をとる等の対策を講じた方が良いかもしれません。
この特典の見所は色々ありますが、個人的には良い”ほほえみ”が見られるところが魅力だと思っています。
ありがとう、「関ジャニ∞クロニクル」。福山さんには足を向けて寝られません。

「今」、全体的に明るくポップな感じのMV。メンバーが楽しそうで何よりです。

 


私が初めて関ジャニ∞のアルバムを借りたのは、およそ半年前のことでした。
2013年発売、「JUKE BOX」。
このアルバムを聴くまで、私はアイドルのアルバムがこんなに丁寧に作られていることを知らなかったし、
関ジャニ∞がこんなに魅力的な歌を歌う、そして作る人達だとは想像もしていませんでした。
価値観をひっくり返されるようなこの経験は、私が関ジャニ∞のファンになる大きなきっかけの一つであったように思います。
「JUKE BOX」というアルバムが関ジャニ∞にとって大きなターニングポイントであったことは後に知るわけですが、
この「ジャム」というアルバムもまた、関ジャニ∞というグループにとっての大きなターニングポイントになるのでしょう。
それを今、この瞬間に感じていられることが凄く嬉しいし、贅沢なことだなと思っています。

 

最近、関ジャニ∞の音楽は、普段ジャニーズのグループを扱うことの少ない媒体においても取り上げられることが多くなっています。
バンド演奏を披露する機会も格段に増えているし、今回のアルバムが「ファン以外」のリスナーを意識していることは明らかでしょう。
そういった「ファン以外の人にも手に取ってもらえる」現状を喜んでいる人もいれば、内心複雑な気持ちで見ている人もいるかもしれません。
どういった感じ方が正解とか間違いとかいう話をするつもりは全くないです。
ただ、もしかしたらファンの人の中には「置いてけぼりにされているかも」と感じる人もいるのではないかということに最近気が付いて、それはとても寂しいことだと思うのです。

どのジャンルでもそうですが、特にジャニーズアイドル界隈は、
その特殊さゆえに「ファン以外」からの評価を気にする傾向が強いと感じています。
確かに全然知らない人からの視点って、また新鮮で面白いんですよね。
でも、それは同時に、「ファン」からの評価の価値を必要以上に下げてしまう危うさを持ち合わせているように思います。
「好きだから聴く。」
その感情はごくごく普通のことだし、否定する権利は誰にだってないはずなのに、
その対象が「アイドル」だからというだけで下に見られる。とても不思議なことだなと思います。
「ファン以外」の評価が高まる一方で、その「好きだから」という当たり前の感情に引け目を感じてしまっている人もいると思うと、とても寂しく悲しい気持ちになります。
「アイドル」の音楽の良いところは、色々な人が同じ曲を聴き、楽しむことができる、そういった点であると思うのです。
違法ダウンロードとかで音源を手に入れている、などであれば話は別ですが、
一リスナーの立場に優劣なんてないんですよね。ごくごく当たり前のことなのだけれど。

と、同時に。
色々な人に聴いてもらうことを目標とするならば、ある程度の普遍性が必要なわけで、
そう考えたら、「アイドル」にとって一番怖いのは、「分からない」と思われることなのではないでしょうか。
そりゃまあ好きな人が好きな物に打ち込んで頑張っている姿はこの上なく魅力的だけれど、「分からない」とまで思わせてしまったら本も子もない気がします。
そういった点でも、そして演奏的な面においても、今後関ジャニ∞というグループの音楽がどう展開していくか、その鍵を握っているのは、横山さんと村上さんの2人なのではないかと思っています。…と勝手に思っています。あくまでも、勝手に。
その冷静さと、「メンバーの曲が良い」と素直に感じられる感性は大切だと思うので。

……最後に勢いで駄文を書き連ねてしまったわけですが、そんな講釈はこのアルバムには必要ありませんでしたね、少し反省。
半年前、偶然つけたテレビに映った「金八せんせーい!」とはしゃぐお兄さん達、その姿を見なければ、私はこのアルバムを手にすることはなかったのかもしれないと思うと、凄く不思議です。
あの時の私は、そのグループのアルバムをこんなに聴きこむことになるとは絶対考えていなかったし、よもや命を救われることなど想像だにしていなかったはずですから。
まあ、その件についての話は絶対するつもりないので置いておきます(笑)

ドラマや映画にバラエティ、そして音楽と、様々な分野において快進撃を続ける関ジャニ∞
そんな彼らの「今」が詰まったアルバム「ジャム」は、聴く人それぞれで違った美味しさを感じる作品だと思います。

皆さんの「ジャム」は、どんな味がしますか?