しゅみのログ(2021.4~5)


 最近、帰り道にある交番から、ふわっと蚊取り線香の匂いがしてくることに気付きました。私はどうしても時間の流れに鈍感なので、「あれ、もうそんな季節だっけ」と何かに気付かされる瞬間が結構あります。ふと、「中学の頃、数学の先生が蓄えていたもしゃもしゃの髭を綺麗に剃ってくるのを見て夏の訪れを感じてたな」とか、とても懐かしいことを思い出しました。思い出したからか、長らく伸ばしっぱなしにしていた髪をようやく切りました。以上、近頃のどうでもいい話でした。
 

 本題へ。元々は3ヶ月に1回くらい書こうかな程度に考えていたのですが、いったんこのタイミングで整理しておきたかったので更新します。
 
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    • GRAPEVINE「新しい果実」(Album)
    • 日向坂46「君しか勝たん」(Single)
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フリージア


 気付くとそこは香りの海だった。
 ……と書いてみれば見栄えは華やかだったりするのかもしれないけれど、私の目の前にあるのは残念ながらそんな良いものではなかった。無惨に横たわった無機質なボトルから、無色透明の液体がじんわりと広がっていく。こういう時は「海」というより「溜まり」とか書いたりするんだろうか、もし順調に蒸発していれば何日分になったんだろう、などと思考を飛ばしながら、春の香りにしては主張の強すぎるそれを雑巾で拭いた。めずらしく大規模に掃除をして、普段は置かない芳香剤を置いた途端にこれだ。こうなると自制心よりも投げやりな気持ちが勝つので、手にまとわりついた匂いを洗い流してから、スイカバーの箱を乱暴に開けた。

 


 連休の間は、ほとんど家にいた。たまに日用品や食料品を買いに出るくらい。昼過ぎまでぼーっとして、お笑いの配信ライブを観る。そこであるコンビにはまって、白黒1ページのインタビューのためにAmazonで雑誌を買って、読んで、またライブ配信をみて、それからずっと考え事をしていた。

 つくづく思うけれど、暇は怖い。ああでもないこうでもないと言葉を選んでは未送信ボックスに切れ端だけを放り投げる夜の中で、私はおおよそ実像とはかけ離れた彼らの虚像をでかでかと作り上げてしまったようだった。厄介なのは、切れ端を繋いでいる私の情念があまりに醜くて粘着質なことである。どうやら、自分のコンプレックスやら過去の失敗やらを重ね合わせてしまっているらしい。他人に余計なものを背負わせようとするのは良くない兆候だなあと思いながらも、ちらりとのぞく小さくて決定的な「ずれ」と、「正しさ」に対しての強いこだわりに、勝手にシンパシーを抱いてしまう。結局のところ、彼らのネタが好きな理由はそこにあるのだけれど、それを見える形にするのは少し憚られた。もしこの仮説が事実と近いなら、それが誰かにとっては鋭利な刃物になりうるような気がしたからだ。もう少し時間を置いて柔らかくしてから、改めて彼らの素敵なところを沢山語りたいと思う。

 こんな調子なので、「正しさ」とか「普通」とか、そういう曖昧なものの形を気にするようになったのっていつだったかな、とか、そこからずれていることはなんとなく分かるときの居心地の悪さったらないよね、とか余計なことをつい思い出したりもしていた。多分、私が何か新しい趣味を見つけるときは、すぐそばに解決できない孤独感があって、誰かと通じ合うことを無意識のうちに求めているんじゃないかと思う。だから人と人との関係性にのめりこんでしまうし、自分の解釈を書きたくなるし、それを誰かに伝えたくなる。でもそれをご本人には見られたくないという変な自意識が働いたりする。その根底にあるのは、誰かに受け入れてもらえることへの憧れと、受け入れられないことへの恐怖心かもしれない。正直、人との接し方に難がある部分は今も昔もあるので、普段は気にしていないつもりでも、やっぱり根深いものがあるらしい。でも、というより、だからこそ、感覚だけではなくて一度理論としておこしてあるような詞やネタが好きなんだろうな、という発見があった。「正解」を気にしてしまうからこそ、この解釈が本当に正解かどうか辿っていけるような道筋があるものが好きなのだと思う。……実際のところ、この自己分析が本当に正解なのかどうかは、誰にも分からないことではあるけれど。

 


 スイカバーをしゃくしゃく食べたあと、さっきのことを思い出す。
 随分と湿度も高くなっているのに、重い香りのする芳香剤を選んでしまったところから、すでに結末は決まっていたのではないか。そもそもダイエットするとか言っておきながら、ファミリーパックのアイスを買っているのはなぜか。あと物を壁際に寄せるだけでは大掃除とは言えないのではないか……。誤魔化そうと思えばいくらでも取り繕えるけど、滲み出るものってあるんだろうな、と思いながらキーボードを叩いて、このぐちゃっとした気持ちに、それらしきタイトルをつけてみることにした。

しゅみのログ(2021.1~3)

 タイミングを逃すと更新しなくなってしまう癖をどうにかしたいなと思い、今年は観たものや聴いたものを都度まとめていくことにしました。ジャンルもごちゃ混ぜなので結構雑多な感じです。

 

ライブ・コンサート

▽3月

06(土) 「Johnny's Village #2」(配信)
 関ジャニ∞村上信五さんの配信ライブ第2回。ゲストはSexy Zone菊池風磨さん。カラオケや沖縄旅行のエピソード(コロナ禍前)を始め、楽しいトークを沢山聞くことが出来ました。2人のセッションで披露された「Hevenly Psycho」も素晴らしかったです。


27(土) 日向坂46「2回目のひな誕祭」(配信)
 日向坂46のデビュー2周年を記念したライブ。前日の「ユニット祭り」は都合で観られなかったので、こちらだけ。曲をほぼフル尺で観られるのは良いですね。好きだったシーンとか披露してくれて嬉しかった曲とか色々あるんですが、特に「君に話しておきたいこと」の牧歌的な情景が、何故だかやけに沁みました。

 

お笑い 

 全て配信で観ました。改めて一覧にしてみて、「思ったよりチケット買ってる!!」と声に出てしまいました。アーカイブが2日~1週間くらい残るので「期間中に見ればいいし」と、ついつい買いすぎちゃうんですよね……。ただ、これらをなくして繁忙期のストレスは乗り越えられなかったと思うので、必要経費ということで。観ている中で自分の好みも何となく把握できたので、4月以降は絞れる……はず……。

 楽しみにしていた「ピアス」は予想と違う内容でしたが(期待値がちょっと高すぎたかも)、オープニングで「SHAKE」のイントロが流れて4人が踊り始めたときと、いきなり緞帳が閉まって終わったときは、もうめちゃくちゃだなと大笑いしていました。見取り図のお2人は折に触れて「劇場が大切な場所」と話していて、生で観るお笑いの持つ魅力を伝えたいという熱い気持ちも伝わってくるので、いつかきちんと劇場で観たいんですが、いまだ叶わず。先のお楽しみに取っておくことにします。

 配信は観だしたら本当にキリがないので、途中から自分なりに基準を決めて選んでいたのですが、特にロングコートダディが出演しているライブを観ることが多かったように思います。あくまで個人の主観なんですが、ロングコートダディのコントって、お2人の人柄によって柔らかくて手触りのいい包装がされているけれど、実のところ中身はそこまで優しくないのかもしれない、と最近ふと思いまして。優しくない、というと語弊があるので補足すると、「井上さん」にしろ「旅人」にしろ、苦手なものや出来ないことに起因する少しの「ズレ」、「足りなさ」が笑いに変換されていて、捉え方によっては少し意地悪にも思えるかな、と。ただそこに「嫌悪」はなくて、代わりに「諦め」のような感情がじんわり滲んでいるように見えるんですよね。優しいとも冷たいともとれる、そんなところが好きなのかもしれません。

 ……なんか婉曲的すぎて全く伝わらない文章になってしまったので話を変えますが、漫才の新衣装とても素敵ですよね。それぞれのジャケットの裏地が、堂前さんがペイズリー柄、兎さんがお魚の大群になっているのも、それぞれ個性が出ていて凄くいいなと思います。

 他に挙げるとすれば、「第一回ダイヤモンドとニッポンの社長vol.18」、「anna」、「電気」、「竹お笑い」、「SUPER FUNKY GROOVE」。「電気」はこの企画だからこそ起きたミラクル(「#荒ぶる照明さん」)も良かったですし、何よりこのメンバーのネタをがっつり観られるのが最高でした。是非、定期的にユニットライブがみたい。「anna」、「SUPER FUNKY GROOVE」、「竹お笑い」など、充実した単独ライブが沢山見られたのも嬉しかったです。

▽1月

01(金) マヂカルラブリーno寄席(配信/ヨシモト∞ホール)
10(土) マンゲキ男前ブサイクネタ祭り(配信/森ノ宮よしもと漫才劇場)

▽2月

06(土) おおみや差しライブ~囲碁将棋×ニューヨーク編~(配信/大宮ラクーンよしもと劇場)
07(日) 三八紳士と緞帳淑女(配信/ヨシモト∞ホール)
07(日) 東京漫才師VS大阪コント師IN幕張(配信/よしもと幕張イオンモール劇場)
12(金) 見取り図×ニューヨーク「ピアス」(配信/なんばグランド花月)
12(金) Laugh & Peace Art Gallery presents ニューヨーク ヤシキ版画展2021~ギャラリートーク (配信)
13(土) 令和ロマンのR2D2(配信/神保町よしもと漫才劇場)
14(日) 第一回ダイヤモンドとニッポンの社長vol.18(配信/ヨシモト∞ホール)
16(火) 漫進~彼らを表す渾身の一ネタ<4時間SP>~(配信/紀伊國屋サザンシアター)
16(火) 電気(配信/よしもと漫才劇場)
18(木) ロングコートダディのとんぷう~ゾフィー編~(配信/紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA)
19(金) 以後勝利・極~囲碁将棋・ダイタク・ニューヨーク・オズワルド此処に極まる~(配信/紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA)
19(金) GAG単独ライブ「ダサ坊の群像」(配信/ルミネtheよしもと)
20(土) 男性ブランココントライブ栗鼠のセンチメンタル」(配信/紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA)
23(火) 滝音単独ライブ「ハリボテファイティングポーズ」(配信/ヨシモト∞ホール)
23(火) 「伝説の2.23」~囲碁将棋、勝負のフルアドリブ漫才 於・雨の有楽町~(配信/よしもと有楽町シアター)

▽3月

04(木) 濁大阪せり上がりSP〜仲ええなぁ-1GP開催決定〜(配信/よしもと漫才劇場)
05(金) お笑いライブ「おもちゃ箱のブルース」(配信/森ノ宮よしもと漫才劇場)
08(月) ザ・ギースさんラブレターズさんこんにちはライブ(配信/ヨシモト∞ホール)
08(月) もうちょっともうちょっと翔 カベポスター浜田の日(配信/森ノ宮よしもと漫才劇場)
08(月) ユニットライブ「A」(配信/よしもと漫才劇場)
12(金) 大喜利中世の騎士(配信/よしもと漫才劇場)
17(水) 3 PLAN LIVE(配信/ヨシモト∞ホール)
17(水) 空気階段と行く世界一周旅行~トルコ~(配信/ヨシモト∞ホール)
18(木) 漫才リゾット(配信/有楽町よみうりホール)
20(土) また会えたね(配信/よしもと祇園花月)
20(土) 滝音単独ライブ「幕末セールストーク」(配信/よしもと漫才劇場)
20(土) マンゲキ大喜利強化合宿!(配信/森ノ宮よしもと漫才劇場)
21(日) ダイヤモンド第2回単独ライブ「竹お笑い」(配信/ヨシモト∞ホール)
21(日) マヂカル囲碁ショーvol.4(配信/大宮ラクーンよしもと劇場)
24(水) ネタボーイ&プレッシャーボーイ〜最強ネタと最高プレッシャー企画の60分〜(配信/よしもと漫才劇場)
25(木) 濱リリ(配信/COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール)
25(木) 山盛(配信/COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール)
26(金) コントの森(配信/森ノ宮よしもと漫才劇場)
26(金) うるとらブギーズ単独ライブ「SUPER FUNKY GROOVE」(配信/ルミネtheよしもと)
26(金) 森ノ宮でゲームプレイ!~ゲーム実況芸人大集合スペシャル~(配信/森ノ宮よしもと漫才劇場)
28(日) Dr.ハインリッヒ単独ライブ「Dr.ハインリッヒの漫才の館in東京」(配信/ヨシモト∞ホール)
28(日) マヂカルラブリーのスーパーおもしろコーナーライブinなんば(配信/YES THEATER)

 

CD・DVD・Blu-ray

 最近はSpotifyを利用して曲単位で聴くことが多い中、久しぶりにアルバムを何枚か買いました。普段はついつい好きな曲をリピートしてしまいがちですが、一作品を通しで聴く良さも大切にしないといけないですね。あと、2月が誕生月だったので、自分へのプレゼントにBluetoothヘッドホンを買いました。コードがないとこんなにも作業がしやすい!便利!
 「キミセカ」と「がな推し」は買ってはありますが、まだ映像をきちんと観ていないので感想は後程。

▽プレイリスト

Spotifyでよく聞いた曲のプレイリストを作ってみました。

2021.1~3 - playlist | Spotify

▽2月

関ジャニ∞「キミトミタイセカイ」(CD/Single)

▽3月

けやき坂46「ひらがな推し」(Blu-ray) ※全5編

▽others

Cody・Lee「生活のニュース」(CD/Album)
木下百花「家出」(CD/Album)
錦戸亮NOMAD」(CD/Album)
Mega Shinnosuke「HONNE」、「東京熱帯雨林気候」(CD/Album)

 


 ここ3か月は少しだけ調子が悪い時期もありましたが、何とか踏ん張れました。この熱しやすくて冷めやすい性格は短所も多いですが、この性格のお陰で自分を支える柱を少しずつ増やせているような気もするので、悪いことだけじゃないのかな、と考えたり。
 ただ、配信ライブを観るようになってから出費が桁違いに増えたので、そろそろ節約を……します……。あ、今の今まで忘れてましたけど、将来的なお金のことも色々考えないといけない歳になったんでした。いい加減、「これくらいなら食べられるだろう」と食べるものを決めて、結果残しはしないけど満腹になって「これはまずい、食べすぎたな」ってなるのもやめたいです。色々な意味で自分のキャパを知らなさすぎますね。

 ……がっつり話が逸れたところで、そろそろ締めます。
 4月からも、色々なことをバランスよく楽しんでいけたらと思っています。
 それでは!

雑記(2021.3.16)

 ふと文章が書きたくなり、久しぶりに編集画面に向き合っています。
 ここしばらく更新していなかったので、近況の報告と、最近はまっているものの話を色々しようと思います。

重ねる

 2月末に誕生日を迎えました。
 年齢を表す数字がまたひとつ増えた訳ですが、普段あまり意識しないせいか「あ、私いま○○歳なんだ!」と変な驚きがありました。自分のことなのに不思議ですね。四捨五入したら十の位の数字が変わるんだなあ~と呑気に構えてはいますが、ここからますます時間の進みが早くなっていくような気もしています。先のことを全て見通せるわけではないし、将来のことを考えるのは相変わらず苦手ではありますが、少しずつ準備していかなければ。まだまだ体力とスケジュール管理能力が足らないなと感じる日々ですが、また1年、健康に気を付けて過ごします。

笑う

 最近、お笑いを観る時間が増えました。
 正直な話をすると、年末から1月あたりにかけてはストレスを上手く発散できておらず、「お、これはちょっと心がしんどいぞ」と感じる日が少なくなく……。心のバランスを取るのが難しいなと思うなか、あんまり考えずにただただ笑うという時間はかなりの救いになっていたような気がします。
 中でも一番観ていたのは見取り図。ネタもYouTubeもお行儀が良いとは言いにくく、ちょっとだけ粗暴な印象もある気がしますが、二人の人柄の温かさに惹かれました。上手く言語化できないのですが、実は根底には「許容」があるコンビだなと思っています。好きなネタは「板前」。まだ劇場に足を運んだことがないので、遠出できるようになったら生で漫才を観たいです。
 他に観た中で面白かったのはユニットライブの「電気」と、空気階段の「anna」。ロングコートダディのネタはここ最近で観たもの全部好きだったので、配信ライブのチケットを買うときの軸にしています。観たものをまとめておこうと考えてはいるので、キリのいいタイミングで更新できたらと思います。

趣味ってなんだろう

 Twitterを見返してみて、最近あんまり音楽やアイドルの話をしていなかったことに気付きまして。ほとんど新譜を買っていないのもありますが、これは完全に自分の心持ちの問題かなと思います。真正面からエネルギーを受け取れるような体調を整えられていなかったといいますか、「聴いたり観たりしたら色々考えそうだなあ」と感じたら先のお楽しみに取っておく、という付き合い方をしていました。そんな心持ちで「キミトミタイセカイ」のリリースを迎えてしまい、「私は何のためにこのブログとアカウントを作ったんだっけか……」といっちょ前に悩んでしまいました。ただ、今までも色々な浅瀬でちゃぷちゃぷしては戻ってきた場所がここであることも事実だと思うので、彼らが伝えたいものを真正面からキャッチできるようになったら、また感想記事を書こうと思います。また何か違うものに熱中しているかもしれませんが、時々覗いていただければ嬉しいです。



 更新して思いますが、好きなものの話をするって楽しいですね。抱えているものがいい感じに発散される気もします。
 「こんなことも書こうと思ってたな」と色々思い出したので、あまり間があかないうちにまとめられればなと思っています。
 今一番したいのは「新卒社会人が聴く『8UPPERS』はいいぞ」という話ですね。
 『8UPPERS』はいいぞ(大事なことなので2回)。
 



 もうすぐ中学を卒業するという頃、このバンドのCDを初めて買いました。
 今は閉店してしまった地元のタワーレコードで、当時リリースされた新譜のシングルと、この曲が収録されているミニアルバムを。
 10年前の春から、今。変わらず、ずっと特別な曲です。

cinema staff/ 君になりたい【Official Music Video】

空気階段「anna」(2021.2.14/配信)


 空気階段の第4回単独ライブ「anna」を観ました。
 私はこれまで熱心にお笑いを観ていた訳ではないので、恐らく取りこぼしているポイントも多いと思います。ただ、それらを知らない状態で観ても、とても素晴らしい単独ライブであることにかわりありませんでした。むしろ、「ふたりの人となりを知ったら、これよりもっと色々な味がするんですか?えっそれって贅沢すぎやしませんか?」という気持ちの方が大きいです。
 本当に、観て良かった。

 以下、ネタバレあります。

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餅を焼く

 「送ろうか?何個がいい?」
 思えば、母からの電話に「おまかせするわ」と適当に答えたのが良くなかったのかもしれない。年の瀬に届いた小包は、予想していたよりもずっしりと重みがあった。お菓子の空き箱、タッパー、ジップロックと厳重に包まれていたのは、厚みのある角餅10個。毎年3が日でぺろっと平らげている量だけれど、それが一気に集まるとこんな重量になることを、私は今の今まで知らなかった。

 最後に自動餅つき機を見たのはいつだっただろう。実家を離れてからは、帰省する頃には餅つきが終わっていたから、少なくとも6年は見ていない計算になる。ふかしたもち米の柔らかい香りや、つぶつぶがぐるぐると回っていくうちに一つの球体になる様は遠い記憶の中にあるけれど、のした餅を切る感触や重みが思い出せないのは、単にあまり手伝いをしてこなかったからだと思う。自分のこういう部分に気付くようになったのはごく最近のことで、おそらくまだ無意識の中に沢山あるであろう思いやりの欠如のことを思うと、ちょっとだけいやな気持ちになった。そういえば小学生の時の通信簿で……いや、考えるのはやめよう。今の私にできることは、この餅を美味しくいただくことのみである。

 母が言うには、ポイントは3つ。冷凍庫に入れて保管する。電子レンジで温めてからフライパンで焼く。そして、焼き海苔はケチらない。海苔については「緑じゃなくて黒ね!」と繰り返し言うので、結構重要なポイントらしい。棚にずらっと並ぶ海苔の中から黒くてつやつやしたものを選んで購入した。
 お皿にくっつかないようにラップを敷き、レンジで少し温める。フライパンへ移して焼く。待ちきれずに動かすと、餅とり粉のざらざらした音がした。少しずつ膨らみ、うっすらときつね色の焼き目がついてきたところで、しょうゆをまぶす。よし、できた。海苔を巻いて頬張る。この食感、「パリッ」以外のオノマトペで表現できるようになりたい。磯の香り、焼けたしょうゆの香ばしさが食欲を増幅させる。この幸福感は、自分の好みに合うものを自分で作れたという満足感と、美味しいもので満たされた満腹感が混ざっている気がした。餅を焼くだけでこんな気持ちになれるなら、これからもうちょっと、自炊しようかな。

 お礼の電話をすると、母は「やっぱり海苔は黒いほうがいいよね」と言った。電話口の向こう、遠くからなまりの強い父の声がする。母は思い出したように、弟が意味もなく坊主にした話をし始めた。何、その話!私、聞いてないんですけど!

雑記(2021.1.13)

 あけましておめでとうございます。
 昨年は環境が変わり、少し気を張りすぎてしまったり、疲れをため込んでしまったりすることも多かった気がします。今年は仕事も趣味も、何事も無理のない範囲で、できることをひとつずつ増やしていきたいです。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

ニューヨーク Official Channel「ザ・エレクトリカルパレーズ」(2020)

 正月休み。観たい気持ちはありつつも、なかなか勇気が出なかった「ザ・エレクトリカルパレーズ」をやっと再生しました。
 9年前の東京、吉本興業の養成所「吉本総合芸能学院NSC)」に現れた「ザ・エレクトリカルパレーズ(エレパレ)」という集団を軸に、お笑い芸人を目指す若者たちの様々な感情を描いたドキュメンタリー。初めに外側から見た「悪」としてのエレパレを描くことで、それを「青春」と感じていた本人たちとの温度差や、「悪」とされたことに対する戸惑いという感情を引き立たせているのが上手いなと思いました。また、グループに近い存在でも、グループの箔付けとして利用されていた者と、良い部分を享受していた者という真逆の立場の二人が出てくることで、より多面的になっています。「いつかネタにしてやる」という執念だけで持っていたTシャツなのに、あんなに嫌そうに触られている…、とか考えたらもう切ない……。一方で、個人的には「ここをもう少し掘り下げてほしかったな」と感じる部分もありました。もう芸人さんでない方もいるので、仕方ない点はありますが。
 本編であまり触れられていないところだと、エレパレTシャツプレゼント動画で語られている「ニューヨークが聞き手であることの意味」、ラフレクラン西村さんの「エピソード0」も一緒に知るとより楽しめると思います。

 

配信「マヂカルラブリーno寄席」(2021.1.1)

 話題になっていた配信ライブ「マヂカルラブリーno寄席」、見逃し配信を購入しました。混沌としていて、何が起きているかよく分からないけどめちゃくちゃ面白いことだけは確か、みたいな不思議な感覚。あんなに笑ったの久しぶりかもしれないです。
 ランジャタイの野次入り漫才、好きすぎて何度もリピートしてしまいました。野次って元々ナンセンスなものだし、普通は演目の邪魔だと思うんですけど、「野次込みで完成形だったのかもしれない」とさえ思ったのは初めての経験でした。話し手の国崎さんにではなく、聞き手の伊藤さんに「その話お前しか興味ねえよ!」と野次を飛ばす嗅覚が流石。ランジャタイの新しい見方を教えていただいた感じがします。長いもみあげをみて「歩くんだよね?」と聞く発想力が漫画に生かされていないところも含めて好きです。マヂラブの漫才、荒野と化した舞台に出てくるザ・ギース、「ハツ!」のモダンタイムス、「ぷーるぷる!」と合いの手が入る脳みそ夫、永野のブリッジネタ、全部面白かったです。

 

ドラマ「知ってるワイフ」第1話/ドラマ「夢中さ、きみに。」第1話

 今週はリアルタイムで観る体力がなかったので、週末にTVerを開いて一気見しました。「どれから観ようかな」、なんて贅沢な悩み。
 大倉さん主演の木曜ドラマ「知ってるワイフ」第1話は、主人公が過去に戻るまでの経緯をメインとしたお話。元春の言動に少々イラッと来たのですが、それ以上に二人がお互いの話を出来ていないことにやきもきしてしまいました。それぞれの話を嘘だと決めつけずに一から聞けば分かり合えることだってあるかもしれないのにな……。色々な背景を想像すると、元春が「子どものままの大人」なのだとしたら、澪は「大人にならざるを得なかった子ども」なのかもしれないなと思いました。やり直した世界で二人がどうなるか、見守りたいと思います。

  今期のドラマは楽しみな作品がもう一つ。和山やま先生の短編集を原作としたドラマ「夢中さ、きみに。」です。原作もドラマも、それぞれのキャラクターが魅力的なのと、淡々と過ぎていく学校生活の退屈さ、あの空気感の中に出てくる平熱のギャグがたまらなく好きなんですよね。エピソードとしては「うしろの二階堂」が好きです。目高くんが二階堂くんを気にするのは、勿論単純な興味や好奇心もあると思うんですけど、「自分しか知らない」という特別感が大きいのではないかなと思います。あと、二階堂くんにまつわる色々な噂に対して「それは本当に二階堂のせいなのか?」という疑問を持っているところも素敵。実写化という点では、「かわいい人」林くんの再現度も素晴らしいです。次回以降も楽しみ。

 


 久しぶりに感想文を書きました。文章をまとめるってこんなに難しかったっけ……。少し間が空くと中々書き出しにくくなってしまうことに気付いたので、今年は意識して時間を取ります。変わらずマイペースですが、お時間のある時に読んでいただけると嬉しいです。

それでは。